生者の戯れ/闇騎士×キングⅡ世
広葉樹が纏う新緑が姿を消し、幹と枝のみが広がる季節
いよいよ六花が舞い踊り地に到来し始めた
しんしんと夜のうちに降り積もった朝日と色が交わる新雪に
仰向けで寝ころび天を仰ぐ一人の青年がいた
緋色の外套で背は守られているが、銀色の髪は雪に埋もれ
頬の熱は徐々に雪によって体温を奪われ始めた
青年はそんなことは気にもかけず陽と青空を金色の瞳で見続ける、浅い呼吸を繰り返していたが、瞳を閉じ一度深く息を吸い込み吐息をだそうとした
「ティス」
突然の声と気配、その姿を確認する前に唇を重ねられ驚きと
共に零れたであろう吐息は名前を呼んだ相手の唇に流れ消えていった
「えっと……おはよう、シルド」
「今日が俺の命日かと覚悟した」
口づけを落した、漆黒を髪と瞳に宿すシルドと呼ばれた青年は
ティスと呼んだ幼い顔立ちの残る青年の手を取り、上半身を起き上がらせながら告げる
「綺麗だなぁと思って、思わず寝ころんでみただけだったんだけどね」
「あのまま雪に溶けてしまいそうに見えた」
「……ふふ」
冗談だとティスは一瞬過ったが、目の前にいる彼はそんな冗談をいう人物ではない事をすぐに思い出し、本当にそうみえたのかと思い思わず綻んだ
「何を笑ってる?」
白い世界、城の片隅他の誰の気配も視線もない朝の気配の中
二つの影と吐息が一つに重なり静寂が広がった
「シルドは温かいね」
唇を離しティスはそのまま黒い外套を纏うシルドの胸元に額を寄せた
「俺はまだ……生きているからな」
「僕も温かいでしょ、まだ」
そうだな、とシルドはティスの髪の雪を払いのけ、肩を抱き寄せ耳元で囁いた
「夜、お前を抱く」
朝の散歩が高くついたなぁと思いながらティスは降ってきた唇をおとなしく受け入れる事にした