「言え、俺は何を忘れている?」
言葉とは裏腹に触れてくる手は優しくて、柔らかな日々の彼を思い出す
最後の決戦で僕の過去を知る人達の記憶全てが燃えて、燃えて燃え尽きてしまった
「思い出せなければ、きっと…大したことじゃなかったんだよ」
そう自分に言い聞かせる、そうでなければ『どうして?僕を忘れたの』と叫んでしまってたかもしれない、命が…助かり良かったと思ってる
でも、忘れて欲しくなかった
ずっと傷口は開いたままだ。「陛下」と助け船の声がバルコニーの出入り口から聞こえ
温かな手を振り払い、僕は逃げた
逃げた僕を何も言わずに向かい入れ、闇騎士から見えないように外套に僕を隠してくれた
フェニキスに縋るように外套を握りしめた
僕はこんなに弱かったのかと、涙が勝手に一つ二つ零れ地面を濡した