今にして思えばという事は人生でよくある事、その種明かしは
なんでもない学校の昼休みの会話から始まっていた
「あ、エクス~そうえいば、シルドさんって結構独占欲のある食いしん坊なんでしょ?レッドウォーリア先輩から聞いたよ」
「はい?」
とある、誘拐事件から知り合いになったF90さんの息子達である
三つ子の一人、ソードの口から兄とは縁遠い言葉が聞こえ思わず聞き返してしまった
学園内にある中学生エリアに近いカフェテリア自由スペースで三つ子達は同じデザインの色違いのお弁当箱を取り出し始めていた
「いえ……そんな事はないと思いますが何故?」
母が作ってくれているお弁当を取り出すタイミングを逃し思考の波が押し寄せる
どちらかと言うと、兄に関しては必要最低限の食事以外は興味を持たない記憶しかない
「プラスに聞いたんだぜ、ヘビィがシルドさんのお弁当のおかずをとろうとして関節技を
決められてたって、その後プラスが『とばっちりでヘヴィにおいらの弁当半分喰われた!』って怒ってた。」
「あ、僕はヘヴィ先輩から聞きました、お弁当で玉子焼きを一切れ貰おうとしたら指を折られかけたって、警告だったけどとってたら、本気で折られてただろうっていってました」
「……」
内心とても驚いた。確かに兄はこの春から母にお弁当は作ってもらわず、毎朝自分でお弁当を作るようになったが、そこまでのこだわりがあって作っていたのか?と、けれど自分の知っている兄の姿との差にそれは別人では?と思考が考え始めていた
「でもさ~~別の日も一悶着シルド先輩とあったらしいけど、おにぎり二個だけの時に一個くれよっていうヘヴィはダメだと思うよ、俺だって断る」
うんうんと頷く三つ子達のその言葉に、僕は更に混乱した
(兄さんがお弁当を作らなかった日を僕は知らない)
僕達の通っている、この
ブリティス学園は小学校~大学まである一貫校で
昼食は各自で用意する仕組みになっている、購買、学食、持参様々な選択肢はあるが
昼食を必要とする日は必ず兄さんはお弁当を作っていた、少なくとも、僕が知る限りでは
おにぎりだけの記憶はなかった
「それで~……あれ?エクス大丈夫?」
「あ、すみません少し考え事をしていました……それ本当に兄ですか?」
「うん、シルドさんだよ、えーとちょっと待ってね、あったあった、ほら」
ソードが慣れた手つきで、スマホを指でスクロールし目的のものが見つかったのか
画面が映し出されていた、それは綺麗に関節を決められているヘヴィさんと、間違いなく関節技を決めている兄、シルドの姿だった
「本当……だ」
「丁度来ていたレッドウォーリアさんと、プラスが写真と動画に取ってたみたいです」
「俺もあるぜ、動画~いやー綺麗に関節決めててすげーよな」
「……え?」
ずいっと目の前にだされた動画に、声が漏れた、それは兄が関節を決めているからでも
ヘヴィさんが苦しんでいるからでもなく
兄のお弁当が兄の作ったものでは無かったからだ
同時にある仮説が組み立てられ
「すみません、用事を思い出しました」
三人に簡単な謝罪をし、やや距離のある高校の校舎へと足を速めた
『シルドのおかげだよありがとう、お礼は……本当にそれでいいの?僕はできない時は本当に必要最低限のものになってしまうよ?』
『構わない、それからティス、お前はしっかり食事をとれ』
『食べ過ぎると眠くなってしまうからついね、あ、だから交換って言ったのか』
一貫校とはいえ、小学生から中学に上がる時には試験があり、中学から高校の時も試験はある
シルドと呼ばれた男はその為ティスと呼んだ少年の試験勉強に付き合った、ティスにお礼をするねと言われた際、シルドはいくつかの条件をだし、とあるお礼の内容を話した、ティスは驚きながらも、それを桜が綻ぶような温かな笑顔で了解した
「それが一年間のお弁当交換だったという事です……か」
「ごめんね、内緒にしていて」
「食事はしてきたのか?」
「兄さん!」
中学生エリアと高校エリアはグラウンドを挟み、行き来するのにやや時間がかかる場所にある
昼休みに移動する場合は、早食いか、昼食を抜く覚悟が必要になる
「その日は俺の方に用事があり食事を教室でせざるを得なかった日だな」
「君が関節技を決めていたなんて初めて知ったよ、卵焼き一つくらい分けても……」
「断る」
だから、中学の時はティスと一緒にできていた昼食をこの一年はできない事を強いられ気が滅入っていた
「僕とティスが中学エリアで一緒の時に兄さんは一人だったから、今年は兄さんが一緒に食事をとるのか~ってところまでは、しぶしぶ納得はしていましたが、お弁当は聞いてなかったんですよ」
「言わなかったからな」
「母と父は?」
「もちろん知っている、母はお前が気づくまでは黙っているとも言っていた」
「母さん……」
そのくらい自分ですぐに気づけという母の厳しい愛と
父の、そういえばお弁当の話をすると、あわあわしていたなという記憶が蘇る
なんてことないように言う兄の姿。困った表情のティスの表情に口止め含めての約束だったんだなと、ため息を吐き出し心の底からやられたと思い
再び先手を取られないようにする事を誓った
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久方ぶりの、闇騎士×キングⅡ世新規小話です~(学ぱろですが)
前に体調不良君でと記載しましたが、そうなると身体が動けない分、脳みそが
フル回転して、シルドの好物……それはティスの手料理では???と気づき
お弁当ネタが浮かびました。闇騎士はしっかり作ってくる&卒業しても、大学は同じ敷地内エリアなので(中学より近いし、アクセスしやすい)お弁当は作り続けてそう(あくまで交換が一年なので、ティスに食べさせるお弁当は作り続ける男)
ティスは基本お弁当は作りますが、申告の会った通り若干波があり、作れない時はシンプルになります(おにぎり二個とか)最初は手作り+購入で量の
かさましをしようとしましたが、手作り以外は自分で購入するとシルドが言ったので
取り決めとして、手作り品のみを渡しています。
そういう意味では例えば、エクスとフェニキス(灼熱)が今年は良いところのチョコレートをプレゼントしようと、善意でティスが高級チョコを贈った時、シルドはチョコレートサンドイッチ(手作り)を貰っている感じですかね~~ティスは、こんな簡単でもいいのかなぁ~?と思いつつ。良いと断言されているので、シルドには手作りを上げるのが普通となってますね
後日、三つ子経由で事のあらましを聞き、フェニキス(灼熱)も、やられたと
ダメージうけてそうかな
勢いで書いた小話でしたが
拝読ありがとうございました。